風っこストーブ列車湯けむり号の旅~2012年~

ローカル線旅日記
ここは焼き鳥屋さん?

~2012年2月25日の旅~

プロローグ

降り続いた雪の影響で西大崎駅周辺は雪だらけ。最寄駅から予定を変更して岩出山駅に行き、車をそこに止めて13:30の鳴子温泉行に乗りました。

今回は普段日本海ファクトリー特派員として活躍してくださっている3名の方々が集結しての楽しい小旅行です。


さて、鳴子温泉駅についてみると、当然ながらすでに下りの風っこが到着して、上りの出発時刻までゆっくりと休んでいました。

岩出山で雪がたいへんなら、鳴子温泉はもっと大変だろうな~と思ってやってきましたが、予想したほどの大変さではなくてよかった。

発車までまだ40分ほどあるので、鳴子温泉駅前の柴崎商店に入ってコロッケを買いました。SL湯けむり号の運転時にはお弁当も作るこのお店は、お肉屋さんなのでコロッケがとにかく美味しい(メンチカツももちろんおいしい)。私のお気に入りのお店です。

そうしてコロッケを調達してそのまま風っこに乗り込むことにしました。

仙台からやってきた下り列車が11:00に鳴子温泉に到着し、上りとして出発するのが14:35。休養十分でいつでも走れるぜ!っていう感じの風っこストーブ列車湯けむり号です。

駅のホームに立っていると、鳴子温泉の硫黄の匂いがぷ~んと匂ってきます。なにしろ、駅前にはぽっぽの足湯があって、たくさんの旅行者さんの大根が煮込まれて・・・いえ、太ももが温められているのです。


2面3線の鳴子温泉駅の一番外側のホームに風っこストーブ列車湯けむり号がいます。

江合川と国道を見下ろす高台にある鳴子温泉駅では見晴らしはいいものの、ちょっとした不安感を誘うような崖になっています。

 

出発時刻の少し前、鳴子温泉観光協会の方々が着ぐるみを着たり横断幕を持ったり、プチセレモニーで楽しませてくれました。(この横断幕は快速リゾートみのりで訪れても見ることができますよ。)

この、こけしの絵、ちょっと可愛い!

 

SL湯けむり復興号の時にも見た記憶がある犬の着ぐるみは、鳴子温泉郷のひとつでもある鬼首(おにこうべ)のスキー場からやってきたキャラクターで、ラッキーちゃんといいます。(※ この翌年だったかな、引退して姿を見なくなりました)

それとともに、ちょっと怖い・・・歩く鳴子こけし。それを見た小さな坊やを泣かせちゃったシーンもありました。「え、僕のせいじゃないワン」とでも言っているのでしょうか。

風っこストーブ列車の車内を観察

風っこ号の車内は天井むきだし、蛍光灯でなく電球色の照明、木の座席と、個性的で味わいのあるインテリアとなっています。

今回の主役のストーブ君

列車内でストーブ! ちょっと珍しい光景ではありますが、しっかりと遮熱版が設置されていますから、少々揺れる列車内で燃やしても安全です。もちろん煙突もありますから空気の汚れも心配ありません。

よく見ると、「すのこ」の所に金属の網が掛けてあります。

その理由はあとで明らかに・・・・。

風っこの大きな特徴の一つは、「足元まである窓」

 

そして、何だかステンドグラスの枠のようなデザインの模様がついていて、てんとう虫やトンボ、花など、いくつかの模様が描かれています。

座席は木製なのでちょいと固いです。社内全体が温かいので冷たくはありません。座席の下に物入れスペースがあるのが嬉しいですね。この車両のインテリアデザインの良さを生かすには網棚を付けるのはNG。その代わりのスペースとして座席下が活用できるというわけです。

風っこのトイレ

風っこの車両、種車はキハ48ですから国鉄型気動車ですが、この時代にジョイフルトレインとして活躍しているだけあってトイレもしっかりバリアフリーとなっています。身障者の方にも配慮されているようですね。

 

いよいよ出発の時間

風っこストーブ列車湯けむり号がいよいよ鳴子温泉駅を出発します。
買ってきたコロッケもすっかり食べ終わり、いよいよメイン旅の始まりにワクワク。

実は、陸羽東線沿線に住んでいながら鳴子温泉方面の乗車はこのたびが初めてでした。いつもは自動車で線路を見上げているわけですが、この日は国道を見下ろします。

そして、この列車のメインアイテム、ストーブもすっかり火が回り、温まって、風っこストーブ列車湯けむり号の2両編成の車内を暖気が包み込んでいます。

あ、ストーブの上に金網が載っている! そういえば、すぐ横に金網がぶら下がっていたけど、あの網じゃない?

 

そうです。

このストーブの上でするめイカを焼いていたんです。私じゃないですヨ。

で、同行していた特派員Nさんも「僕のおにぎり、焼いてもいいかな~」なんて言いながらも、ちょっと勇気がなかったらしく、漂ってくるスルメの匂いで我慢してました。

エンジンと胸の高鳴り

列車はゆっくりと走りだし、鳴子の街並みと江合川の車窓を楽しみ、和気あいあいと、ストーブで暖まった車内ではスルメイカの匂いを嗅ぎつつ、旅を楽しんでいきます。

鳴子御殿湯駅を出るとすぐに江合川の鉄橋です。SLの時にはたくさんのカメラマンが三脚を立てて構える、陸羽東線一のスポット。外から見る列車も絵になりますが、車内から眺める川の景色も絶景です。

川渡温泉駅では下り列車と交換が行われます。この日はキハ110系・111形・112形のすべて基本色の3両。外は雪がちらついて幾らか雰囲気が出てきました。一方で、列車内の人の熱気と香ばしい臭いも高まってきます。

左側には山が迫ってくるところを走りますが、右側の車窓に巨大こけしが見えてきたら鳴子温泉地区から岩出山地区に入ります。大きな右カーブを過ぎるともうすぐ池月駅を通過します。そしてここから長~い直線の線路で田園風景が一気に広がります。ただ、車内はもう窓が曇って景色をまともに見るのは難しいかな・・・。

そうして、有備館駅へ。この駅で最初の降車客3名。お子様連れの方でした。この駅は昔の学問所として知られる旧有備館の目の前に駅があり、ここから岩出山駅まで歩くコースも風情あることで知られています。

さて、列車はさらに進み、次の岩出山駅を過ぎると、いよいよ日本海ファクトリー事務所が見えてくる。・・・・え~っと、・・・あった! 曇りガラスの向こうに何とかみつけたその事務所の姿が見えなくなると西大崎駅を勢いよく通過していきます。

曇りがひどくなってくると、車窓よりもおしゃべりに夢中に・・・。

列車は西古川駅に到着しましたが、この駅は客扱いを行なわないで列車交換だけ行なう停車でした。それでも7分もの停車。 昔ならごく普通の光景でしたけど、ちょっと珍しい感じがしました。

逆に、その次の古川駅は1分に満たない停車時間で出発しました。余談ですが、古川駅の手前で「ただ今前方の信号が赤のため・・・」と、線路上でちょっと停車したのも何だか久しぶりに味わう光景。

こうして、列車は陸羽東線を走り切り、車窓左から合流してくる東北本線に入り、小牛田駅に到着しました。

東北本線を行く風っこストーブ湯けむり号

小牛田駅停車中の風っこストーブ湯けむり号

普段鳴子方面よりずいぶん雪が少ない小牛田界隈もこの日は結構雪がありました。広い構内が真っ白なじゅうたんで覆われています。

2分の停車の後、列車は動き出します。さあ、ここからは電化区間でなおかつ幹線です。先ほどまでは85㎞/h制限だったようですが、先ほどまでよりスピード感と軽やかさを感じ、線路上を見ていると95㎞/h制限を示す表示が見られました。

それにしても、いつも単線を見ていると「複線」というだけで「幹線」だなぁっていう感じがします。それでも、この東北本線も優等列車が通る姿を見ることはほとんどなくなりました。30年前には数多くの電車特急や客車急行などが往来していたんだなぁ・・・。なんだか不思議な気持ちで線路上を眺めてしまいました。

松島駅に停まる風っこストーブ湯けむり号

そんなことをぼんやり考えているうちに、松山町、鹿島台、品井沼、愛宕を通過し、次の停車駅である松島駅までやってきました。

松島駅は大きくカーブしている駅です。風っこストーブ列車湯けむり号もちょっと傾いて停車しています。それにしても、松島に来てなお雪景色が見られるとは思ってもいませんでした。

ここでは5分間の停車があるので、身体を伸ばしたい人や車内の熱気がちょっと身に染みて外の空気を吸いたくなった人などが思い思いにホームで談笑しています。

とはいえわずか5分。出発の時間はあっという間にやってきてしまいます。乗り遅れては大変ですから私もそそくさと・・・。

トンネルで深まる風っこの味わい深さ

さて、また車内の様子です。

歩き回る人あり、団らんを楽しむ人あり、それぞれに楽しんでいますが、松島から塩釜にかけての区間はトンネルが多く、ここまでの車内の様子とはまた違った一面を楽しむことができます。

ここは焼き鳥屋さん?

それは、この風っこストーブ列車湯けむり号の電球色の照明がもたらす味わいで、トンネルの中で温かい雰囲気を醸し出していい感じなのです。

どうです?さながら焼き鳥屋さんでしょ。もしくは、居酒屋さんかな。いや、居酒屋さんに子どもがうろうろしていてはいけないか・・・。

まぁ、とにかく、なんだかいい雰囲気ということで・・・。

景色の変化と環境の変化を楽しむ

 

トンネルを抜けたらまた違った雰囲気を楽しめる。これはまさに、鉄道の旅ならではですよね。長距離バスなどはこんなに自由に飲食ができませんしね。

さて、旅ももう終盤。仙石線と並行し、カラフルなラインの205系とすれ違いました。また東北本線にもいくつかのすれ違い列車があり、またあらためて幹線であることを思い出します。

鉄ちゃん的楽しみが最後に連続・・・

陸前山王駅から岩切駅に近づくころ、右の方に視線を送ると新幹線総合車両センターがあり、休憩中の新幹線車両が見えます。次に、東仙台にある貨物用機関車の基地が左手にあり、それを横目に見ながらさらに進みます。

「あ、廃車間近のナナゴー!(ED75)」

そうです、この直後の3月に仙貨のED75はすべての運用を終えたのですが、最後の雄姿を見ることができました。私がその姿を見たのはまさにその時が最後です。

そしてラストイベント、仙台車両センターが見えてきました!そこにも先日運用を離れたあいづライナーの485系の姿を発見。そうこうしているうちに、楽しい旅も終わりに近づいてきました。

風っこストーブ湯けむり号が仙台駅に到着です。

ついに仙台駅到着です。

到着したと思ったらもう尾灯が点灯。引き揚げスタンバイです。もうちょっと余韻があってもいいのになぁと思いますね。

やっぱり、この路線設定はいいですね。風景に変化があり、メリハリを感じます。(最後は鉄ちゃん的楽しみに集中しちゃいましたが。)

今回の旅で使用した切符

 

小さな旅ホリデーパスは2500円でまる一日乗り降り自由。喜多方・新白河から新庄や世界遺産の平泉までと広いエリアをカバーしています。

私の場合は岩出山駅から鳴子温泉駅に向かう時と仙台から岩出山に向かう時にも有効ですからお得になりました。

ちなみに、この切符を50歳以上限定の大人の休日倶楽部で購入すると、たったの1600円だったんですよ。あ、私はまだまだ対象ではありません(笑)。

2012年と2017年の風っこストーブ湯けむり号比較

さて、どうして今になって2012年の乗車記をリライトしたかといいますと、この5年間でちょっとずつ改善が図られてきたことを振り返りたかったからです。

★1 フリースペース車両を増結

2014年の運転時から、リゾートみのり号の中間車両を仙台側に増結してフリースペースとするようになりました。風っこは木製の硬い椅子ですから柔らかいリクライニングシートの部分に移動できるのは嬉しいですよね。

★2 ついに座布団の設置!

座布団!

フリースペースもいいけど、せっかくなら自分の席で、普段味わえないこの車両を味わい尽くしたいという人もいます。

そんな人にとってはやっぱりこの座布団が用意されたのは朗報です。2両のうちの1両がベージュの暖色系、もう一両がグレーのようなネイビーブルーのような色で、車両ごとに統一されています。

 

ここ数年、毎年企画される風っこストーブ湯けむり号、来年も走るのでしょうか。どんな姿でやってくるのか、また楽しみです!

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