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「弁当忘れても傘忘れるな」
この言葉は天候の変わりやすい能登地方の言い習わしだそうです。ずいぶん前に(今は廃線になった)九十九湾小木駅の駅前にある「民宿くわな」さんの息子さんにお聞きしたことを今でも覚えています。
2016年12月16日金曜日。初めて乗車した「のと里山里海号」の車窓がまさにその言葉を思い出させるような、小雨あり、晴れ間あり、吹雪ありのめまぐるしいお天気でした。
それは、外で何かお仕事をするには大変なことかもしれませんが、列車に乗って眺める車窓としては「能登の魅力を存分に味わえる演出」のようでした。いろいろな表情を見せる里山と里海の景色を楽しみ、おもてなしの心をたっぷりと味わうホットな空間での約1時間の旅。
その備忘録の始まりです。
のと里山里海号には2つのコースがある
今回乗車したのは水曜日を除く平日を中心に運転する「カジュアルコース」でしたが、土曜・休日を中心に運転する「ゆったりコース」というものもあります。
今回のカジュアルコースの方は予約不要・自由席ということで利用しやすい反面、お客さんが殺到したら乗れないかも!という心配がちょっとありますね。料金は、運賃を通常通りに券売機で購入し、乗車した後で乗車整理券(300円)をアテンダントさんにお支払することになります。好きな席に座って待っていれば順番に回って来てくださるので、慌てなくて大丈夫です。
ちなみに、小学生や未就学児も座席を使用するため乗車整理券の料金が必要です。
のと里山里海53号と花嫁のれん号
12:26発のこの列車に乗るために私が七尾駅に着いたのは正午過ぎ。このコースは供食列車ではないので駅の売店で昼食を買い求め、券売機で乗車券を購入して乗車に備えます。駅弁を希望するなら早めにGETしないと売り切れてしまうようです。(私は残念ながら・・・)
七尾駅改札口はJR西日本の改札の右側にのと鉄道用の改札があり、乗り換え用の改札が別途ホーム上にある形です。
のと里山里海号はすでに入線していて座席確保を急ぐべきかな?と悩みつつも、私は12:13に来る上りの観光特急花嫁のれん号も見てみたいと思い、JRの入場券も購入して到着を待ちました。
花嫁のれん号の到着時には一青窈さんの「ハナミズキ」の曲が流れ、雰囲気を盛り上げます。名曲に思いをはせつつ和倉温泉方向を見つめていると、華やかで優美な車両が近づいてきました。
「和」の美しさを豪華に盛り込んだ、素敵な車両です。
一方、一瞬のツーショットとなった、右側の「のと里山里海号」は深みのあるブルーに上品に添えられた赤い裾のライン、そしてゴールドのサイン類がとても素敵です。能登を彩る観光列車の競演、見逃すわけにはいきませんよ。
[ad#ad-1]アテンダントさんのお出迎え
花嫁のれん号を見送り、いよいよのと里山里海号へと歩を進めます。
すると、手前側の乗降口のところでアテンダントさんがお出迎えしてくださいました。とても上品で落ち着きのある装いで歓迎してくださるので、より一層この列車が素敵に見えます。
カジュアルコースという名称なので気になりませんが、そうでなければ私自身の服装を「もうちょっと考えて選ばないといけなかったかな?」と感じていたかもしれません。
もちろん、けっして堅苦しい雰囲気という訳ではなく、それだけ気品を感じる素敵な車内空間だということなのです。
車内空間は伝統工芸を生かした和の美しさ
車内に一歩入ってまず目に入るのが、沿線の田鶴浜で生産される組子細工を使った建具です。この車両に乗った第一印象が「ちょっと水戸岡さんのテイストに似てる?」というものですが、でもたとえ味付けが似ているとしても、純粋に地元の伝統工芸をみごとに取り入れているのはやはり観光列車のあるべき姿だと思いますし、実際に素敵だと感じて「これはなんというものですか」と尋ねる人も多いことから、とても意味深いことだと思います。
私自身、やはり「素敵なインテリアだなぁ」と思いました。中央にある絵もひとつひとつ異なるものがはめ込まれていて、控えめながらもとても美しく組子細工を引き立てています。
アテンダントさんの心遣い
走り始めてしばらくたった頃、アテンダントさんのお一人が小さな籠をもって回ってこられました。
「車内が乾燥してまいりましたので、よろしかったらキャンディーをいかがですか」
些細なことに思えるかもしれませんが、このちょっとした心遣いがとても心地よく、「また乗りたいな」とか「乗って良かったな」と思わせるのではないでしょうか。
キャンディーを受け取って「ありがとう」と言いながら小さな子供たちの顔がニッコリするのを見ると、本当にこんな小さく見える心遣いが決して小さくないんだなぁと思えた瞬間でした。
ビュースポットでの観光停車
ビュースポットというものは、観光列車としては珍しくないかもしれません。でも、その路線その路線の美しい風景がある以上、同じものはあるはずがありません。
そして、この能登の景色は天候がコロコロと変わるのが面白く、このスポットに停車している間にも小雪が降ったかと思えば日がさす瞬間があったりして、「一粒で二度おいしい」というような思いで車窓を眺めることができました。
このポイントのほかにも2か所のビュースポットがあり、のと鉄道ならではの楽しさが十分に味わえたという印象でした。
希少車両「オユ10」との再会
実は、私がこの車両が保存されている能登中島駅を訪れるのは、これが初めてではなく、まだ七尾線だったころに来たことがあります。その頃、同じ車両を同じ場所で見たのですが、錆び錆びでボロボロだったのが印象深く思いに残っています。
それが何と、立派に修復されて塗装しなおされて美しい姿になっているではありませんか。すごいですね。これを見る時間が取り分けられていて車内を観察することもできます。(折り返しののと里山里海54号には見学時間は設定されていませんでした)
この車両は全国に2両しか残っていないうちの1両なんですよ。車内に郵便を扱う職員さんが乗っていた時代を髣髴させる配置・演出がなされているのでぜひ能登中島駅停車中に車内を見学してみてください。
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列車交換も楽しいクジ引き感覚
のと鉄道はローカル線でありながら列車交換できる駅が多く、何度かの列車交換を見ることができます。そして走る車両も何種類かのラッピング車両があるので「こんどはどんなデザインの車両が来るのかな?」という、言ってみればクジ引きのような楽しみがあるのです。
まずやってきたのはNO TO GO!というラッピングが施された車両です。これはこの地方出身の永井豪さんのアニメ作品のラッピングです。遠くから見ても大きな白い文字ではっきり区別がつきます。
次にやってきたのは「花咲くいろは」のラッピング車両です。このアニメは「西岸駅」を舞台とし、架空の温泉地を描いたストーリーだとのこと。金沢近郊の湯涌温泉もコラボしている(?)ようで、人気のようですね。
車両の出入り口が建物の扉のように「喜翆荘」と書かれているのも面白いですね。作品タイトル通り、とても華やかな花のデザインなのも幅広い方々に好評の理由なのでしょうね。
旅の最後のお楽しみ!
のと里山里海53号の旅は約1時間。穴水駅に近づく頃、トンネルを通ります。その時、社員の皆さんの手作りのイルミネーションの飾り付けが見られます。
サプライズでイルミネーションがあるんですよ!なんて、ここで書くとネタバレですね(笑)。でも、わかっていても思わず歓声を上げてしまう瞬間なのですよ。
上手に写真を撮れなかったのが悔やまれるところですが、可愛いイルカたちの形に飾られたイルミネーションもとてもすてきでした。
そんな歓声をいくらか残しながら、のと里山里海号は終点の穴水駅に到着です。
ホットな観光列車の旅の終わり
最後は穴水駅でのワンショット。
雪が降ったり晴れたりとコロコロ変わるお天気の最後は小雪でした。ヘッドマークにも少々着雪して穴水に到着しました。
この後、一旦七尾方向に引き上げたかと思うと、向かい側のプラットホームの向こう側に入り、2両編成を1両ずつに切り離します。それは、折り返しで七尾行きとして走る「のと里山里海54号」の運転は一般車両の普通列車と併結運転をするからです。
ホームに降り立つとやはり、少し冷たい風が吹き付けます。それでも待合室は暖かく、お隣の物産館もホットな空間です。
[ad#ad-2]あの日と同じアングルで・・・
私にとって、穴水駅の訪問はおそらく25年ぶり。管轄する会社も車両もあの日とは違っています。輪島や珠洲・蛸島への列車もなくなりました。でも、なんだかとても懐かしく感じました。
最後に、1991年のあの日撮った写真と並べてラストショット。
四半世紀の時を経てもあの日の景色がここにあった。
気が付くと終端駅になっていた穴水駅。この地にこれからも鉄路があり、素敵な能登の景色を味わえる列車が走り続けることを願います。
穴水駅の物産館ではこんなグルメをゲット!
おなかのスペースには限度があるけど、おいしいものをいろいろ食べてみたい! と、そんなわがままな願いをかなえてくれたのがこちらのグルメ。